三年生へ

 このページでは,本研究室の運営方法や卒業研究の進め方などについて,1〜3年生向けに,まとめています.


先進ネットワーク研究室の特徴

2021年度にできた新しい研究室です。卒業論文(卒論)研究や修士論文(修論)研究では、ネットワークを数学で取り扱えるようモデル化し、ネットワークの制御・設計アルゴリズムを考案します。そして計算機シミュレーションや、最適化理論・学習理論・ゲーム理論などによる理論解析で、考案したネットワーク制御・設計技術の有効性を評価します。

上山は以下の2つを目標に先進ネットワーク研究室を運営しています。

  • 学生に卒業後に役立つ能力を教授すること
  • 数多くの研究成果を社会に還元すること

大学は主に学生が払う授業料と国から交付される税金で運営されています。そのため大学の研究室は、学生に十分な教育効果を提供することと、研究成果を学会で積極的に発表して技術の発展に貢献することが求められます。そしてこれら2つを同時に実現する有効な方法が、学生が多数の学会発表が行える研究指導だと思います。

そのため学生にはできるだけ多くの学会発表を行うよう努めてもらっています。これまでに、福岡大学の大学院修士課程の6人の学生に研究指導を行ってきましたが、学部時代と合わせて、各学生は平均で国際会議1回、国内の学会発表を4.7回、行っています。また立命館に移ってから現在までに、6人の4年生に研究指導を行ってきましたが、各学生は平均で国際会議0.5回、国内学会発表を2回、行っています(国際会議は投稿中のものも含んでカウント)。研究室に配属された3年生は、まだ研究の経験が無いため、学生自身で学会発表に繋がるような研究テーマを見つけることは容易ではありません。そのため上山が研究テーマの候補を用意し、学生の希望を考慮して割り当てます。未解決でかつ解く価値のある研究課題を卒論/修論の研究テーマに設定しますので、学会で研究成果を発表することができます。学会発表は教育効果が高く、就職活動や奨学金の返済免除などの様々な観点でメリットがあります。学会発表の様々なメリットについては、こちらにまとめています。また学会発表を行った学生の参加レポートをこちらで閲覧できます。

早い人は3年生の間に学会発表を行います。少なくとも4年生の間に1回以上は、学会発表を行ってもらいますので、研究に意欲のある学生を歓迎します。また大学院進学には様々なメリット(こちらにまとめています)がありますので大学院への進学を勧めています。大学院の学生は、海外の学会(国際会議)で1回以上、研究成果を発表することを目標に研究に取り組んでもらいます。国内外の様々な学会に参加する際は、研究室の予算で旅費や宿泊費を負担します。

全員が参加しての進捗ゼミを週に一度の頻度で開催していますが、ゼミだけでは各学生の指導に十分な時間をかけることが難しいです。そのため学生が効率的・効果的・スピード感をもって研究に取り組み、教育効果が高められるよう、進捗ゼミに加えて、週に1回の頻度で上山は各学生に十分な時間をかけて個別の打ち合わせ(研究指導)を行います。

卒業研究は、これまでに皆さんが受けてきた講義や実験・演習科目とは異なり、未解決の答えが分からない課題に取り組みます。そのためスムーズに進まないことも多く継続的な努力が求められますが、研究が進んだときには大きな達成感・充実感がえられます。皆さんには大学生活の集大成として、ぜひ卒業研究に意欲的に取り組み、卒業研究を楽しんでほしいと思います。


研究テーマ

ネットワークセキュリティ技術やネットワークの設計/制御技術など、ネットワークインフラ技術の全般を研究対象にしています。さらに災害時の通信や避難者救助の研究や、IoT、ネットワーク経済性の研究にも取り組んでいます。

ネットワークセキュリティ

社会インフラとしての役割を担うインターネット上で、サービス不能攻撃やデータの改ざん、データの窃取など、情報セキュリティに関する脅威が増しています。

そこで本研究室では、利用者が安心・安全・快適にネットワークサービスを受けられるネットワークセキュリティ技術の研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • キャッシュサーバの性能を低下させる攻撃に関する技術『』『
  • ネットワーク上の特定エリアのサーバを機能不全とする攻撃を検知する技術『
  • CDNのキャッシュサーバを騙ったDDoS攻撃を検知する技術『』『
  • 有償コンテンツの不当配信を防ぐアクセス制御技術『』『』『
  • スマホから環境データを収集する際に不正なデータを排除する技術『』『
  • ブロックチェーンを用いた耐改ざん性の高いデータ管理技術『』『

などです。人々が快適・安心にネットワークを利用できる環境を維持する重要性の高いテーマです。


情報指向ネットワーク

コンテンツを効率的に配信する次世代のネットワークとして、情報指向ネットワーク(ICN: Information-Centric Networking)が注目されています。ICNはルータからキャッシュ配信を行う技術です。しかしICNを広範囲に実現するためには、解決すべき問題が多くあります。

そこで本研究室では、ICNを広範囲で実現するための研究を行っています。主なテーマは、

  • 次世代の情報ネットワークである情報指向ネットワークを大規模に実現する技術
    』『』『』『』『』『
  • 情報指向ネットワークを部分的に導入する技術『』『
  • SNSでデータを高速に取得して快適にSNSを使用できる技術『』『
  • AS間トラヒックを低減する動的ミラー配置技術『

などです。今のインターネットを置き換える革新的な新しいネットワーク技術のテーマです。


キャッシュ配信

普段、スマホやパソコンでウェブページを見たり、YouTubeなどで動画を視聴することが多いと思います。しかし、なかなかウェブページが表示されなかったり、動画の再生が始まるまで時間がかかったり、画面が動かなくなったりするとストレスを感じます。

そこで本研究室では、インターネットで快適にウェブ閲覧や動画視聴ができるためのキャッシュ配信に関する研究を行っています。主なテーマは、

  • ウェブページを高速に表示する技術『
  • 深層学習(AI)を用いてIoTデータの将来の需要を予測しキャッシュを制御する技術『
  • スマホで撮影した写真をネットワークで共有するサービスのキャッシュ制御技術『
  • CDNの配信サーバを適切に選択する技術『
  • 低コストのサーバを多数用いて高信頼なCDNを構築する技術『
  • キャッシュを活用したコンテンツ推薦技術『

などです。身近なネットワークサービスを快適にする技術のテーマです。


災害時の情報通信

地震が頻繁に発生する日本においては、大規模災害時に被災者の救援活動を迅速に行う技術の展開が重要です。また災害時には通信インフラが損傷や停電により使用できない状況が予想されるため、災害時に情報通信手段をいかに確立するかが重要です。

また移動端末やドローンなど、自律的に移動するデバイスを活用し、コンテンツ配信や災害時の被災者救助を行うことが期待されています。

そこで本研究室では、災害時に被災者を迅速に救援するための研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • 地震などの大規模災害発生時に、避難者間で情報を共有して迅速に避難できる技術『』『
  • 災害時にドローンを用いて被災者の救助活動をサポートする技術『
  • 災害などでネットワークが壊れてもネットワークを使い続けられる技術『

などです。災害時の避難行動を助ける技術のテーマです。


IoT

従来のインターネットはコンテンツ等のデジタルデータをスマホやパソコン等の計算機間で伝送する目的で主に使用されてきました。しかし近年、街中や郊外の様々な場所に設置されたセンサーデバイスやカメラ等から様々なデータを収集し、実世界の様々な活動の支援やサービスに活用するIoTが注目されています。IoTを用いることで、センサーやスマホで測定した気温や湿度などの様々な環境データなどを活用し、これまでなかった新しいサービスの開発が期待されています。

そこで本研究室では、IoTデータを効率的・高信頼に送信するための新しいネットワークの仕組みIoTシステムに関して研究を行っています。主なテーマは、

  • 大規模なIoTサービスを低コストで実現する技術『』『
  • 害鳥獣をセンサーを用いて検知する技術『』『
  • 冷蔵庫の中の食材をセンサーで検知し、代替食材として活用したレシピ推薦技術『

などです。あらゆるモノをネットワークで繋げるIoTの活用を促進するテーマです。


ネットワークサービスの制度・規制

例えばYouTube動画をスマホで視聴するサービスには、動画を提供するコンテンツ事業者、広告代理店、ネットワーク事業者、ユーザなど、多様な事業者・ユーザが関わっています。

そのためネットワークサービスを提供する配信システムを適切に設計するには、利害が対立する様々な事業者・ユーザの間の関連性を把握したモデル化・分析が必要です。

そこで本研究室では、ネットワークサービスに係る事業者・ユーザ間の関係を分析し、望ましい規制や仕組みを明らかにする研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • 次世代の情報ネットワークである情報指向ネットワークの普及を促進する仕組みの研究『
  • 移動通信事業者の差別化戦略の是非を明らかにする研究『

などです。ネットワークサービスが健全な発展を続け、人々が多くのメリットを享受できる仕組みの実現を目指したテーマです。


研究テーマの決め方

学会発表ができる、新規性があって取り組む価値のある研究テーマを、研究の経験が無い学部3年生が自分で探し出すことは困難です。そのため上山から研究テーマの候補を示し、学生には候補の中から取り組みたいテーマの順位を挙げてもらいます。そして、できるだけ学生の希望を考慮して、各学生が取り組む研究テーマを決定します。1人1人、異なる研究テーマに取り組んでもらいます。また、取り組みたい研究テーマがある場合は提案も受け付けます。


卒業研究の進め方

情報ネットワークは規模が大きく、実際にネットワークを構築して実験を行うことが困難です。そのためネットワーク制御技術の効果を評価する際には計算機シミュレーションが広く用いられています。計算機シミュレーションとは、対象となるシステムの挙動をモデル化し、模擬するプログラムを作成して実行することで、計算機上で対象となるシステムの挙動を再現する分析方法です。

卒業研究でも、計算機シミュレーションのためのプログラムをC言語やPythonで書いて数値評価を行います。そのためプログラミングの能力を高めることができます。その準備として3年生には、まずC言語を用いて計算機シミュレータを作成する演習を行います。段階的に様々な演習課題に取り組むことで、計算機シミュレーションの仕組みを基礎から易しく学びます。

研究には課題調査から始まって研究発表に至るまで、とても数多くのやるべきことがあります。しかし最初に行う課題調査、解決アプローチの検討は、研究の経験がない学部3年生が行うのは難しいので、教員が事前に設定したものを学生に渡します。

そして続く、詳細な解決法の検討と数値評価の設計は、教員が主導的に学生とディスカッションをしながら進めていきます。学部の学生の皆さんには主にその後の、数値評価から研究発表の部分を取り組んでもらいます。例外もありますが、卒論研究は以下の手順で進めます。

  • 研究テーマの背景や課題を理解するため、教員が指定した関連研究の論文(和文と英文あり)を読んで内容を理解
  • 研究課題を解決するための方法を、教員とディスカッションしながら一緒に検討
  • 提案方式の有効性を示すための性能評価モデル・評価方法を教員と一緒に検討
  • 計算機シミュレータや数値解析のプログラムをC言語やPythonでコーディング・デバッキング
  • 作成したプログラムを実行してデータを取得し、グラフを作成して結果を分析
  • 学会発表の原稿を執筆し、発表スライドを作成し、学会で発表
  • 卒論の報告書・発表スライドを作成し、卒論報告会で発表

大学院の修士論文の研究も基本は卒論研究と手順は同じですが、学生がより主体的に、課題調査、解決アプローチや詳細な解決法の検討、数値評価の設計も含めて行います。

上記の全ての手順において、各学生に対し週に1度の頻度で上山が個別に研究打合せを行い、研究の進捗の確認と具体的な取組の方法を指導します。計算機シミュレーションや数値評価のためのプログラミングは、多くの場合、研究室の先輩や教員が以前に作成したものをベースに機能を追加・拡張することで行います。またプログラミングや学会発表の原稿・発表スライドの作成は、教員や先輩がサポートします。


ゼミ

本研究室では、以下の研究室ゼミを実施しています。

  • 進捗報告会: 自分が取り組んでいる研究の進捗状況を10分程度で報告してもらい、上山がコメントをします。研究の細かな打ち合わせは上山との個別打ち合わせで行いますので、進捗ゼミは研究室の全メンバー間で互いの研究内容や進捗状況の共有を主な目的としています。【1回(2コマ)/週】
  • シミュレータ作成演習: C言語やPythonを用いたシミュレータの作成方法を勉強します。【3年生を対象に1回(2コマ)/週】
  • 輪講: 研究テーマに関連する論文を読んで、要点をまとめて発表してもらいます。研究分野の知識を深めたり、要点をつかんでまとめる訓練を目的としています。【1回(2コマ)/週】
  • 勉強会・発表練習会: 論文の読み方、論文の書き方、効果的なプレゼンテーションの方法、学会発表練習など、研究を進める上で必要な技術を勉強します。(非定期に実施)
  • 1対1プレゼン会: 学生を2人づつペアにして、一方が他方に自分の研究につて3分で説明し、聞いている方が2分で質問をします。そして役割を入れ替えて行い、ペアをずらして全員がペアになるまで反復します。他者に自分の研究をわかりやすく説明する力や、質問する力がつきます。また、研究室の他のメンバの研究を深く知ることができます。(非定期に実施)

卒論では多くの場合、計算機シミュレータを作成しますので、その作成法を学ぶために3年生は研究室に配属後、最初にシミュレータ作成演習に取り組んでもらいます。3年生は授業が多いため、シミュレータ作成演習に取り組んでいる間は輪講への参加は求めません。しかし研究室の先輩の研究内容を知り、自身の卒論テーマの分野を決める参考にもなるため、進捗報告会には参加してもらいます。またシミュレータ作成演習が終了した3年生には、輪講に参加してもらいます。そのため3年生は以下のどちらかのパタンとなり、週に2回、合計4コマのゼミに参加することになります。

  • パタン1: 進捗報告会(1回(2コマ)) + シミュレータ作成演習(1回(2コマ))
  • パタン2: 進捗報告会(1回(2コマ)) + 輪講(1回(2コマ))

なお希望する人には、シミュレータ作成演習に参加中に、輪講にも参加してもらって結構です。