ネットワーク制御/配信最適化

生成AI、クラウド、動画配信、IoT、5G/6G、衛星通信などの普及により、ネットワークを流れるデータ量は増加し続けています。また、通信に求められる品質も、単に「つながる」だけでなく、低遅延、高スループット、高信頼、公平性、省電力性など、多様化しています。

このような環境で高品質なネットワークサービスを提供するには、ネットワークの状態を正確に測定し、混雑、遅延、負荷、キャッシュ状態、利用者の需要などに応じて、通信経路、送信レート、配信サーバ、キャッシュ配置、計算資源を適切に制御する技術が重要になります。

先進ネットワーク研究室では、ネットワークを安定・高品質・高効率に運用するための制御技術と、コンテンツやデータを利用者に効率よく届けるための配信最適化技術について研究しています。

主な研究テーマ

輻輳制御・公平性制御

インターネットでは、多数の通信フローが同じネットワーク資源を共有します。各フローの送信レートは、TCPやQUICなどの輻輳制御アルゴリズムによって決まりますが、通信経路の遅延、利用するアルゴリズム、ネットワークの混雑状況が異なると、フロー間でスループットや遅延に不公平が生じる場合があります。

本研究室では、異なるRTTを持つ通信環境や、地上ネットワークと衛星ネットワークが混在する環境を対象に、輻輳制御の公平性や通信品質を分析し、より公平で安定した通信を実現するための制御技術を研究しています。

研究例:

  • 遅延、スループット、公平性を考慮したネットワーク制御
  • RTTが異なるフロー間の輻輳制御の公平性分析
  • QUIC/BBRの動作特性の評価と制御パラメタの適応化
  • 地上ネットワークと衛星ネットワークを組み合わせた経路配分制御

トラヒック測定・ネットワーク状態推定

ネットワークを適切に制御するには、現在どこで混雑が発生しているのか、どのような通信が流れているのか、異常な通信が発生していないかを把握する必要があります。しかし、ルータやスイッチを流れるパケット数は非常に多いため、すべての通信を詳細に記録することは困難です。

本研究室では、スケッチと呼ばれる確率的データ構造や、P4などのプログラマブルデータプレーン技術を用いて、少ないメモリと処理負荷でネットワーク状態を把握するための測定技術を研究しています。

研究例:

  • 測定結果に基づくリアルタイムなネットワーク制御
  • スケッチを用いた低メモリ・高精度なトラヒック測定
  • 複数ノードに配置した分散スケッチによるネットワーク測定
  • P4スイッチを用いた高速なパケット測定・制御

CDN・キャッシュ・コンテンツ配信最適化

Webページ、動画、ソフトウェア、AI関連データなどのコンテンツを効率よく配信するには、利用者に近い場所にデータを配置し、適切なサーバや経路から配信することが重要です。CDNやエッジキャッシュを用いることで、通信遅延を短縮し、バックボーンネットワークの負荷を軽減できます。

一方で、どのコンテンツをどのキャッシュサーバに配置するか、どの配信サーバを選択するか、推薦システムがキャッシュ効率にどのような影響を与えるかなど、解くべき課題は多く残されています。

本研究室では、コンテンツの人気度、地域性、キャッシュ状態、ネットワーク負荷、サーバの信頼性などを考慮した配信最適化技術を研究しています。

研究例:

  • Anycast CDNにおける配信サーバ選択法
  • キャッシュ状態を考慮したコンテンツ推薦技術
  • 低信頼なエッジキャッシュを用いた高信頼な配信制御
  • IPFSや情報指向ネットワークにおける効率的なコンテンツ探索・配信
  • LEO衛星やエッジネットワークを用いたキャッシュ配信制御

ネットワーク内コンピューティング・資源割当

近年、データを単に転送するだけでなく、ネットワーク内のルータ、スイッチ、エッジサーバなどで計算処理を行うネットワーク内コンピューティングが注目されています。データを遠くのクラウドまで送るのではなく、ネットワーク内で処理することで、遅延の短縮や通信量の削減が期待できます。

本研究室では、ネットワーク内の限られた計算資源やストレージ資源を、どこに、どのように割り当てるかを決定するための制御技術を研究しています。

研究例:

  • 通信遅延と計算負荷を考慮したサービス配置制御
  • ネットワーク内コンピューティングの資源割当
  • エッジサーバへの処理配置最適化
  • 情報指向ネットワークを用いた自律的な処理配置

研究で用いる技術

本分野では、ネットワークの仕組みを理解したうえで、数理モデル、アルゴリズム設計、シミュレーション、機械学習、ネットワークエミュレーション、実機実験などを組み合わせて研究を進めます。

主に用いる技術は以下の通りです。

  • TCP/QUICなどのトランスポート層プロトコル
  • 輻輳制御、経路制御、トラヒックエンジニアリング
  • CDN、エッジキャッシュ、情報指向ネットワーク、IPFS
  • スケッチ、P4、プログラマブルデータプレーン
  • 数理最適化、機械学習、ゲーム理論
  • Mininet、CORE、ネットワークシミュレーション、実機評価

この分野の研究は、インターネットを「速く」「安定に」「公平に」「効率よく」動作させるための基盤技術です。