三年生へ

 このページでは,本研究室の運営方法や卒業研究の進め方などについて,1〜3年生向けに,まとめています.


2025年 研究室公開

先進ネットワーク研究室の説明会(研究室公開)を以下の日時に、先進ネットワーク研究室(H棟9階のH925)で実施します。各回の最初に上山から研究室の説明を行いますので、できれば各回の開始時刻までに研究室に来てもらえるとよいです。後半は、研究室の学生のみが参加する懇談会を行いますので、研究室の先輩から研究内容や研究室の様子について詳しく聞くことができます。途中退出は、いつでも可能です。事前予約は不要ですので、気楽にご参加ください。複数回の参加も大歓迎です。3年生だけでなく、1年生や2年生も参加可能です。研究室公開に参加した人は、アンケートへの回答をお願いします。

また、上山との個人面談も受け付けています。個人面談を希望する人は、申込フォームから面談を申し込んでください。申込フォームからの提出が、不具合で上山に届かないことがあるようなので、申し込んだのに1日以上、上山からメール返信がないときは、上山に電子メール(kamiaki@fc.ritsumei.ac.jp)に連絡をお願いします(@は小文字に変換してください)。

今期は、進捗ゼミを毎週、月曜の3時限と4時限と、火曜の1~4時限に行っています。6/9(月)と6/10(火)にも行いますので、進捗ゼミを見学することも可能です。先進ネットワーク内の打合せ卓で進捗ゼミを行っていますので、時限の途中から見学してもらっても、途中退出してもらっても結構です。各回の研究分野は以下の通りです.

  • 6/9(月) 3時限 ネットワークセキュリティ
  • 6/9(月) 4時限 ネットワーク測定/制御、ネットワークキャッシュ
  • 6/10(火) 1時限 ネットワーク測定/制御、ネットワークキャッシュ
  • 6/10(火) 2時限 量子ネットワーク
  • 6/10(火) 3時限 低軌道衛星ネットワーク
  • 6/10(火) 4時限 ネットワーク測定/制御、ネットワークキャッシュ

時限の途中で終わることもありますので、見学される場合は、各時限の早めに来てもらった方がよいです。

研究室公開の開催日時

6月2日(月) 12:20~13:10, 16:40~18:15

6月3日(火) 12:20~13:10, 16:40~18:15

6月4日(水) 12:20~13:10, 16:40~18:15

6月5日(木) 12:20~13:10, 16:40~18:15 (5時限の回は上山は不参加)

6月6日(金) 12:20~13:10, 16:40~18:15 (お昼休みの回は上山は不参加)

6月9日(月) 12:20~13:10, 16:40~18:15

6月10日(火) 12:20~13:10, 16:40~18:15 (5時限の回は上山は不参加)

6月11日(水) 12:20~13:10, 16:40~18:15


先進ネットワーク研究室の特徴

卒業論文(卒論)研究や修士論文(修論)研究では、ネットワークを数学で取り扱えるようモデル化し、ネットワークの制御・設計アルゴリズムを考案します。そして計算機シミュレーションや、最適化理論・学習理論・ゲーム理論などによる理論解析、実機実験のいずれかの方法によって、考案したネットワーク制御・設計技術の有効性を評価します。

上山は以下の2つを目標に先進ネットワーク研究室を運営しています。

  • 学生に卒業後に役立つ能力を教授すること
  • 数多くの研究成果を社会に還元すること

大学は主に学生が払う授業料と国から交付される税金で運営されています。そのため大学の研究室は、学生に十分な教育効果を提供することと、研究成果を学会で積極的に発表して技術の発展に貢献することが求められます。そしてこれら2つを同時に実現する有効な方法が、学生が多数の学会発表が行える研究指導だと考えています。

そのため学生にはできるだけ多くの学会発表を行うよう努めてもらっています。これまでに学部3年生から研究室に所属した指導学生(福岡大学の学生を含む)の中で、13名が大学院修士課程を卒業しましたが、各学生は学部時代と合わせて平均で査読付国際会議に1.2回の採録を果たし、全員が1回以上、査読付国際会議に採録されています。また国内の学会発表を平均で5.6回行っています。

研究室に配属された3年生は、まだ研究の経験が無いため、学生自身で学会発表に繋がるような研究テーマを見つけることは容易ではありません。そのため上山が研究テーマの候補を用意し、学生の希望を考慮して割り当てます。未解決でかつ解く価値のある研究課題を卒論の研究テーマに設定しますので、研究成果が出やすく早期に学会で研究成果を発表することができます。学会発表は教育効果が高く、就職活動や奨学金の返済免除などの様々な観点でメリットがあります。学会発表の様々なメリットについては、こちらにまとめています。また学会発表を行った学生の参加レポートをこちらで閲覧できます。

4年生の間に1回以上は、学会発表を行うことを目標に卒業研究に取り組んでもらいますので、研究に意欲のある学生を歓迎します。また大学院進学には様々なメリット(こちらにまとめています)がありますので大学院への進学を勧めています。これまでのところ、本研究室の4年生のうち約75%の学生が本研究室の大学院に進学しています。大学院の学生は、海外の学会(国際会議)で1回以上、研究成果を発表することを目標に研究に取り組んでもらいます。国内外の様々な学会に参加する際は、研究室の予算で旅費や宿泊費を負担します。

大学院生は学会発表を多数行うことで、奨学金の返済免除や成績優秀者奨学金に選ばれやすくなります。本研究室は、卒論テーマを上山が用意しますので(学生からの研究テーマの提案も受け付けます)、4年生のほぼ全員が4年生のうちに国内の学会で研究発表を行います。また大学院生のほぼ全員が、大学院生のうちに査読付国際会議に投稿しています。学会発表を積極的に行う結果、成績の上位25%の学生が選定される大学院成績優秀者奨学金を、上山研の多くの大学院生が獲得しています。例えば2024年度のM2を対象としたものは、SNコースで9名が受賞しましたが、そのうちの約半数の4名が上山研の学生でした。また日本学生支援機構の奨学金の返済免除対象者3名のうち、2名が上山研の学生でした。

本研究室を卒業した学生は、NTT西日本などの大手通信キャリア、TISなどの大手システムインテグレータ、富士通などの大手総合ITベンダなどに就職しています。卒業研究は、これまでに皆さんが受けてきた講義や実験・演習科目とは異なり、未解決の答えが分からない課題に取り組みます。そのためスムーズに進まないことも多く継続的な努力が求められますが、研究が進んだときには大きな達成感・充実感がえられます。皆さんには大学生活の集大成として、ぜひ卒業研究に意欲的に取り組み、卒業研究を楽しんでほしいと思います。


研究テーマ

ネットワークの測定/制御技術やネットワークセキュリティ技術など、ネットワークインフラ技術の全般を主な研究対象にしています。これまでに本研究室を卒業した学生の修論/卒論は、ここで確認できます。

ネットワーク測定/制御

ネットワークの混雑を回避し安定した運用を行うには、ネットワークの状態やトラヒックの流れを測定し、パケットの流量規制や経路制御など様々な制御を行う必要があります。

そこで本研究室では、ネットワークを安定・高効率・低消費電力で運用し続けるためのネットワーク測定/制御技術の研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • ルータで低負荷な処理でトラヒックフローの状態を監視するフロー測定技術『
  • 様々な輻輳制御アルゴリズムが混在する環境での利用者間の公平性を実現する技術『』『
  • ネットワーク内で様々なコンピューティングを行う際のワーク割当技術『』『
  • コンテンツのオリジナルの位置を適正化する技術『

などです。大規模ネットワークを安定して運用するための重要な技術です。

ネットワークキャッシュ

普段、スマホやパソコンでウェブページを見たり、YouTubeなどで動画を視聴することが多いと思います。しかし、なかなかウェブページが表示されなかったり、動画の再生が始まるまで時間がかかったり、画面が動かなくなったりするとストレスを感じます。

そこで本研究室では、インターネットで快適にウェブ閲覧や動画視聴ができるためのネットワークキャッシュに関する研究を行っています。主なテーマは、

  • CDNの配信サーバを適切に選択する技術『
  • 低コストのサーバを多数用いて高信頼なCDNを構築する技術『
  • キャッシュの状態を考慮したコンテンツ推薦技術『
  • 次世代の情報ネットワークである情報指向ネットワークを大規模に実現する技術
  • 情報指向ネットワークを部分的に導入する技術『』『
  • 情報指向ネットワークの普及を促進するための調整金システム『
  • IPFSの可用性向上技術/遅延低減技術/攻撃に対する防御技術

などです。身近なネットワークサービスを快適にする技術のテーマです。

ネットワークセキュリティ

そこで本研究室では、利用者が安心・安全・快適にネットワークサービスを受けられるネットワークセキュリティ技術の研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • キャッシュサーバの性能を低下させる攻撃の検知・防御技術『
  • CDNのキャッシュサーバをターゲットとした攻撃の影響分析 『
  • CDNのキャッシュサーバを騙ったDDoS攻撃を検知する技術『
  • ネットワーク上の特定エリアのサーバを機能不全とする攻撃を検知する技術『
  • 有償コンテンツの不当配信を防ぐアクセス制御技術『
  • ブロックチェーンを用いた耐改ざん性の高いデータ管理技術『
  • キャッシュポリューション攻撃の防御のための分散台帳IOTAを用いたICNのコンテンツ名管理技術『
  • 複数ブロックチェーン間の情報交換技術

などです。人々が快適・安心にネットワークを利用できる環境を維持する重要性の高いテーマです。

低軌道衛星ネットワーク

近年、高度500km~2,000km上空を周回する低軌道衛星を中継ノードとして用いてネットワークを提供する低軌道(LEO)衛星ネットワークが注目されています。LEO衛星は時速27,000kmと高速で移動することから、特に大容量コンテンツを安定・高品質・低コストで配信するためには、配信に用いるLEO衛星の選択や配信経路の制御技術が重要です。

そこで本研究室では2024年度より、LEO衛星ネットワークを効率的・高品質に運用するための研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • LEO衛星に搭載されたキャッシュ上にコンテンツを最適に配置する技術『
  • LEO衛星キャッシュの局所的なキャッシュ法『
  • LEO衛星キャッシュの配信キャッシュサーバ選択法『
  • 複数のLEO衛星ネットワーク事業者間の提携時の収益配分法『

などです。今後の普及が期待される新しいネットワークを効率的・低コストに運用し普及を促進するテーマです。

量子ネットワーク

量子ビットを用いて、全く新しい概念で演算を行う量子コンピュータが、劇的に演算速度を向上させる技術として注目されています。そして複数の量子コンピュータ間で量子ビットを転送する量子ネットワークが、大規模な量子演算を行う技術として重要性が増しています。

そこで本研究室では2024年度より、量子ビットの転送に用いられる量子テレポーテーションに不可欠な量子もつれペア(EPRペア)を効果的・効率的に用いるための研究に取り組んでいます。主なテーマは、

  • 量子メモリを最適に配置する技術『
  • EPRペアを動的に配置する技術
  • DQNNベースのFidelity予測による蒸留最適化技術『

などです。従来のネットワークとは異なる量子ビットを転送する全く新しいネットワークを実現するテーマです。


卒業研究の進め方

情報ネットワークは規模が大きく、実際にネットワークを構築して実験を行うことが困難です。そのためネットワーク制御技術の効果を評価する際には計算機シミュレーションが広く用いられています。計算機シミュレーションとは、対象となるシステムの挙動をモデル化し、模擬するプログラムを作成して実行することで、計算機上で対象となるシステムの挙動を再現する分析方法です。

卒業研究でも、計算機シミュレーションのためのプログラムをC言語やPythonで書いて数値評価を行います。そのためプログラミングの能力を高めることができます。その準備として3年生には、まずC言語を用いて計算機シミュレータを作成する演習を行います。段階的に様々な演習課題に取り組むことで、計算機シミュレーションの仕組みを基礎から易しく学びます。

また近年、プログラムにより動作を柔軟に変更可能な高速スイッチであるP4スイッチを用いた、ネットワーク測定/制御技術の実装研究が注目されています。本研究室でも以下の写真のようなP4スイッチを1台、所有しており、ネットワーク測定/制御技術の実装に取り組み始めています。

例外もありますが、卒論研究は以下の手順で進めます。

  • 研究テーマの背景や課題を理解するため、教員が指定した関連研究の論文(和文と英文あり)を読んで内容を理解
  • 研究課題を解決するための方法を、教員とディスカッションしながら一緒に検討
  • 提案方式の有効性を示すための性能評価モデル・評価方法を教員と一緒に検討
  • 計算機シミュレータや数値解析のプログラムをC言語やPythonでコーディング・デバッキング
  • 作成したプログラムを実行してデータを取得し、グラフを作成して結果を分析
  • 学会発表の原稿を執筆し、発表スライドを作成し、学会で発表
  • 卒論の報告書・発表スライドを作成し、卒論報告会で発表

大学院の修士論文の研究も基本は卒論研究と手順は同じですが、学生がより主体的に、課題調査、解決アプローチや詳細な解決法の検討、数値評価の設計も含めて行います。

上記の全ての手順において、各学生に対し週に1度の頻度で上山が個別に研究打合せを行い、研究の進捗の確認と具体的な取組の方法を指導します。プログラミングや学会発表の原稿・発表スライドの作成は、上山や先輩がサポートします。


ゼミ

本研究室では、以下の研究室ゼミを開催しています。

  • 進捗ゼミ
  • 一般ゼミ
  • 学生進捗ゼミ

また3年生を対象として、以下のゼミを開催しています。

  • シミュレータ作成演習
  • 勉強会

各々のゼミの内容は、以下の通りです。

  • 進捗ゼミ: 学年別の4~6人程度のグループごとに開催します。上山は各学生と個別に15分~30分程度の時間をかけて打合せを行います。各学生に、自分が取り組んでいる研究の進捗を報告してもらい、上山が疑問点について回答したり、次に行うべきことを指示します。【1回/週の頻度で開催】
  • 一般ゼミ: 論文紹介、発表練習、出張報告、1対1プレゼン会など多様な目的で実施しています。【1回/週の頻度で開催】
  • 論文紹介: 研究テーマに関連する論文を読んで、要点をまとめて発表してもらいます。研究分野の知識を深めたり、要点をつかんでまとめる訓練を目的としています。一般ゼミで実施します。
  • 1対1プレゼン会: 学生を2人づつペアにして、一方が他方に自分の研究につて3分で説明し、聞いている方が2分で質問をします。そして役割を入れ替えて行い、ペアをずらして全員がペアになるまで反復します。他者に自分の研究をわかりやすく説明する力や、質問する力がつきます。また、研究室の他のメンバの研究を深く知ることができます。
  • 学生進捗ゼミ: 研究領域別に10人程度のグループで開催しますが、上山は参加しません。同じ研究領域のメンバー間での互いの研究内容や進捗状況の共有が目的です。学生だけで行うため、学生間で活発に意見が出ます。他学生からのフィードバック、他学生が取り組んでいる研究の知見が得られる、質問をする力が養われるなど、様々なメリットがあります。【1回/の頻度で開催】
  • シミュレータ作成演習: 3年生を対象に、C言語やPythonを用いたシミュレータの作成方法を勉強します。研究室の先輩が交代で、チューターとして参加します。【1回/週の頻度で開催】
  • 勉強会: 3年生を対象に、卒論や修論に取り組む上で有益な理論や技術について勉強します。【1回/週の頻度で開催】

卒業生の主な就職先

以下に示すような、大手通信キャリア、大手システムインテグレータ、大手ITベンダなど、ITの分野の多様な業界に就職しています。

  • NTT西日本
  • ドコモCS九州
  • ソフトバンク
  • 富士通
  • TIS
  • 大日本印刷
  • ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ
  • ビックカメラ