
インターネットは突発的に大量のトラヒックが発生したり、ルータ等のネットワーク機器の障害により、ネットワークの特定の箇所でトラヒックが集中することがあります。その結果、ネットワークサービスのスループットが大幅に低下したり、遅延時間が大幅に増加する品質劣化が発生します。また攻撃者が大量のパケットをホストなどに送りつけてサービスを妨害する攻撃などのサイバー攻撃が、日常的に発生しています。
このような問題に対処し、ネットワークを安定・高品質な状態に維持するには、ネットワークの状態をリアルタイムに監視するネットワーク測定技術や、測定結果に応じてネットワークを適切な状態に保つネットワーク制御技術が不可欠です。
そこで以下のテーマを中心に、人々が安心・快適にネットワークサービスを利用できるためのネットワーク測定・制御技術の研究を進めています。
分散スケッチの重複回避測定方式
ルータでは大量のフロー(各サービスを構成するパケットの集合)が流れるため、測定のための所要メモリ量がアクセス回数を低減する技術として、スケッチと呼ばれる確率的データ構造が用いられています。しかし単一の高機能なスケッチを1つのノードに配置すると、単一障害により全体が測定できなくなる問題や、測定データの通信コストが生じることから、低スペックなスケッチを多数のノードに分散配置する分散スケッチが注目されています。
そこで本研究では、複数のスケッチ間で重複して同じフローを測定対象とする問題を解決するための技術の研究に取り組んでいます。
フロー制御の公平性分析
インターネットでは多数のフローがルータを経由します。各フローのパケット送信レートは各送信ホストが自律的に、輻輳制御アルゴリズム(CCA: congestion control algorithm)に従い決定します。しかしCCAにはReno、CUBIC、BBRなど様々なものが使用されており、異なるCCAを用いたフロー間で獲得できるスループットに不公平性が生じる問題が指摘されています。
そこで本研究室では、フロー間の公平性がどの程度、実現されるかを、ネットワークエミュレータを用いて分析する研究に取り組んでいます。
ネットワーク内コンピューティングの資源割当
ネットワーク内のルータで各種演算を行うネットワーク内コンピューティングが、レスポンス時間を低減する技術として広く研究されています。特に演算内容が、複数のプロセスの組と、それらの前後関係から規定される場合には、各プロセスを実行するルータを適切に割り当てる必要があります。
そこで本研究室では、情報指向ネットワークを用いて各プロセスの実行場所を自律的に決定する研究に取り組んでいます。