IoT / MCS


様々な場所に設置されたセンサーや、様々な人が所有するスマートフォンで測定されたセンシングデータを収集し、分析することで、人々の暮らしに役に立つ情報を抽出するIoT (Internet of Things)が注目されています。また人々が保持するスマートフォンを、温度や高度など様々な環境データを取得するセンシングデバイスとして活用するMCS (mobile crowd sensing)が、低コストで広範囲に環境データを収集する測定プラットフォームとして期待されています。

そこで以下のテーマを中心に、IoTやMCSの活用を促進する技術の研究を進めています。

多段センサを用いた害鳥獣の検知システム

電源の確保が困難な山間部における農作物に被害を与える動物 (害鳥獣) からの被害が問題となっています。害鳥獣からの被害軽減のためにautonomous recording unit (ARU) を用いた音声による野生動物のモニタリングが行われていますが、消費電力削減のために間欠的にARUを動作させるため、ARU待機時のイベントの取りこぼしが課題となっています。

そこで本研究室では、消費電力を抑えながらもイベント取得度の向上を目指し、対象地域内に複数配置したセンサノードの一部のみを起動状態とし、起動センサノードが害鳥獣の検知時に、待機状態の周囲のセンサを起動する害鳥獣モニタリングシステムの研究に取り組んでいます。

災害時のドローンを用いた被災者救助技術

地震や台風などの災害時には、通信インフラの損傷や停電が予想されるため、モバイル端末の使用が困難となります。そこで自律的に飛行し物資の運搬も可能なドローンを用いて被災者の捜索や救助活動を行うことが期待されています。しかし限られた数のドローンを効果的に活用し、迅速に被災者を発見し救助活動を行うには、ドローンの移動経路を適切に選択・設定することが重要です。

そこで本研究室では、被災者の救助に要する時間が最小となるよう、ドローンの移動経路を最適に設計する技術の研究に取り組んでいます。

災害時のDTN通信による情報共有技術

災害が発生したとき被災者が安全かつ迅速に避難するには避難所の情報と避難経路の情報が不可欠です。適切な避難経路の提案には経路の故障状況の収集が必要ですが、大規模災害発生時には通信インフラが使用不可能な状況が想定されます。この問題に対しDTN (Delay Tolerant Network)を用いて、避難者が所有する端末間で通信インフラを用いずに経路の故障状況を収集し、それらの情報を用いた避難経路の提案が有効です。

そこで本研究室では、避難経路上に発生した故障箇所において、避難者属性毎に通行の可否を設定し、避難者属性毎に避難経路を求め提示する研究に取り組んでいます。またキャッシュストレージを街角に設置してキャッシュとして活用し、避難者の移動端末の電力消費を抑制する研究に取り組んでいます。

MCSのデータポイゾニング攻撃の防御技術

スマホなどのモバイル端末をセンサーデバイスとして活用し、様々な環境データの真の値を推測するクラウドセンシングが注目されています。しかし不特定多数のユーザの報告値から真値を推定するため、攻撃者が意図的に偽りのデータを報告することで真値の推定精度を劣化させるデータポイゾニング攻撃の問題が指摘されています。

そこで本研究室では、クラウドセンシングのデータポイゾニング方式や、その防御技術の研究に取り組んでいます。

共創型都市デジタルツインのビジネスモデル

「まちの住人」から現実世界の多種多様なデータを収集しサイバー空間上でシミュレーションを行うことで,人々が暮らす社会の将来の状態や状況を予測する共創型都市デジタルツインが注目されています。住人に対してどのようにデータ提供のためのインセンティブを提供するかが、持続可能な共創型都市デジタルツインを実現する鍵となります。

そこで本研究室では、利害関係者 (ステークホルダ) 間の動的な関係を微分方程式で解析できる進化ゲーム理論を用いて,どのようなビジネスモデルが望ましいかを検証する研究に取り組んでいます。