2026年2月6日に、NICT本部(東京都小金井市)のYRLミニ研究会に参加し、聴講してきました。

初めに

先進ネットワーク研究室M1のKim Minkyuです。2026年2月6日(金)にNICT本部(東京都小金井市)にて開催されたYRLミニ研究会に参加し、聴講してきました。会議の時間は午前10時から午後6時まで開催され、内容は量子鍵配分(quantum key distribution : QKD)、量子センシング、量子コンピューティング、量子メモリに関する最新の研究成果が発表されました。

研究概要

本研究会は午前と午後の2部構成で行われました。

午前セッション

午前のセッションでは、まずQKD(量子鍵配分)の全体像が紹介されました。QKDは文字通り量子鍵配分のための技術ですが、その特徴であり欠点でもあるのは、用途が量子鍵配分にしかないという点です。現状ではPre-量子インターネットとして位置づけられており、地上での伝送は量子リピーター(中継器)の実物がまだ存在しないため、光ファイバーの減衰による距離制約があります。そのため、現在は衛星を利用した通信の実現に向けた動きが進んでいます。しかし、全体像を見たとき、実物の量子リピーターが登場すれば、量子インターネットへの急転換が起こる領域であると考えられます。

次に、量子センシングに関する講演がありました。量子センシングは、量子コンピューティングや量子通信とは正反対のアプローチをとっており、デコヒーレンス(環境変化に敏感に反応する特性)を武器として活用し、観測に応用する技術です。量子分野(コンピューティング・通信・センシング)の中で、最も応用範囲が広い分野とされています。ただし、光が透過できない物体に対しては観測ができないという制約もあります。

午後セッション

午後のセッションでは、量子メモリと線形光学回路に関する講演がありました。

佐々木氏の講演では、光子ベースの量子メモリについて紹介されました。光子生成源としてSPDC(自発パラメトリック下方変換)が用いられ、GHz単位の出力が可能である一方、メモリの読み書き速度はMHz単位にとどまっており、この速度ギャップが課題として提示されました。コヒーレンス時間(T2)についてはms規模が可能であり、格納数は数十〜100個程度とのことです。T2延長のためのアプローチとして、磁気シールドによるゼーマン分裂の防止と、RF制御パルス(CP)による動的ノイズの補正が紹介されました。前者は外部磁場を遮断することでエネルギー準位の分裂を防ぎ、後者は時間変動する残留ノイズを補正することで、理想的な指数減衰デコヒーレンスに近づけるものです。

線形光学回路に関する講演では、ビームスプリッターと位相シフターによる量子計算が紹介されました。1量子ビットゲートはビームスプリッター操作のみで比較的容易に実現できますが、2量子ビットゲートではHong-Ou-Mandel(HOM)効果により干渉が確率的過程となり、成功と失敗が生じます。Bell測定においては、線形光学ではBell state 4つのうち最大2つしか区別できないため、BSM成功確率50%が理論的上限となります。自身の研究シミュレーションにおけるbsm_success_prob = 0.50は、この物理的限界に基づく設定であることが確認できました。

感想

本研究会は、自身の研究に対して、非常に有意義な機会となりました。

これまでWebでの調査を通じてパラメータの数値のみを参考にしていた部分について、本研究会を通じて確かな物理的根拠を直接確認することができました。特にBSM成功確率50%の理論的上限や、デコヒーレンスモデルの妥当性など、シミュレーション設定の正当性が裏付けられたことは大きな収穫です。

また、量子メモリの実現がまだ発展途上にあるという現実も確認できました。光子生成源とメモリ間の速度ギャップ(GHz vs MHz)や、T2延長のための技術的課題など、量子通信の各ステップにそれぞれハードルが存在しており、実用化にはまだ距離があることが明確になりました。

一点残念だったのは、量子蒸留(Distillation)や量子エラー訂正(QEC)に関する議論がなかったことです。自身の研究ではDistillationによるFidelity向上を扱っているため、この分野の最新動向についても聴講できればより有益であったと感じています。