
世界にはインターネットのインフラが未整備で、インターネットを利用できない人が多くいます。また地震等の災害発生時には、ネットワークインフラが損傷することでネットワークが利用できない状況が発生します。これらの問題を解決する有効な方法として、近年、静止軌道衛星と比較して遥かに低い、高度2,000km以下の高度を高速に周回する低軌道(LEO: low earth orbit)衛星を中継ノードとして用いる、LEO衛星ネットワークが注目されています。そしてLEO衛星ネットワークはスターリンク等、実際にサービスが始まっています。しかしLEO衛星は常に高速で移動するため、安定した通信品質を維持するには、これまでには無い解決すべき問題が多数あります。
そこで以下のテーマなどに関して、LEO衛星ネットワークの制御技術やビジネスモデルの研究を進めています。
LEO衛星キャッシュの局所的なキャッシュ法
LEO衛星は上りのスループットが低い ため、地上に存在するサーバからLEO衛星経由で大容量のコンテンツを地上の端末に配信すると,上りのスループットがボトルネックとなります。そのため衛星にキャッシュを配備し、衛星からコンテンツを配信することが有効です。従来のCDNではキャッシュの位置が動かないため、各キャッシュの周辺で高人気なコンテンツをキャッシュに残すことでキャッシュの効率を高めることが可能です。しかしLEO衛星は一定の高度を保つために高速で移動し続けますので、人気の空間的な局所性を反映したキャッシュコンテンツの選択が困難です。そこで衛星と地表のエリアを複数のグループに分け、各衛星は対応するグループのエリアからの配信要求時にコンテンツを置換することで、LEO衛星キャッシュにおいても空間的な人気の局所性を生かしたキャッシュ選択を実現する研究に取り組んでいます。
複数のLEO衛星ネットワーク事業者間の提携時の収益配分法
LEO衛星は地上へのスポット範囲が狭く、また高速で移動し続けるため、LEO衛星ネットワークを展開するには、大量の衛星が必要となります。しかし複数の事業者が提携してLEO衛星ネットワークサービスを提供することで、資金力の乏しい企業であっても衛星ネットワークビジネスへの参入が可能になります。そこで複数事業者の提携時に、協力ゲーム理論を用いて、各事業者に配分する収益を決める技術の研究に取り組んでいます。