ネットワークサービスの制度・規制


ネットワークサービスは、ネットワーク事業者、コンテンツ事業者(CP: Content Provider)、ユーザといった複数のプレイヤによって実現され、これら複数のプレイヤ間の相互作用がコンテンツのネットワーク上の流れ方を決め、サービスの需要、サービス品質、各事業者の利益を決めます。

またコンテンツ配信システムの健全な発展には、特定の事業者が利益を独占することなく、新しい技術やサービスのアイデアをもった個人や零細事業者がサービスを自由に提供できる制度・規制が重要です。

そこで以下のテーマを中心に、新しいネットワーク技術の普及促進やコンテンツ配信システムの健全な発展を図る制度・規制を明らかにするため、複数のプレイヤ間の相互作用を考慮したネットワークサービスの制度・規制に関する研究に取り組んでいます。


情報指向ネットワークの普及可能性の分析や普及促進施策の研究

情報指向ネットワーク(ICN)の導入に伴いネットワーク事業者(ISP: Internet Service Provider)間のトラヒック交流パターンが変化しますが、ISP間でトラヒック量に応じたトランジット費を支払うため、ICNの導入はISPの収益に影響を与えます。そのためICNの普及可能性を明らかにするには、ICN導入がISPの収益に与える影響を定量的に分析する必要があります。

そこで本研究室では、階層的なISP間トポロジを対象にICN導入時のISP間のトラヒック交流量をモデル化したり、さらに実際のISP間のトポロジを用いたマルチエージェントシミュレーションにより、ICN導入がISPの収益に与える影響を分析する研究に取り組んでいます。また、ICNの普及を促進するための施策の研究に取り組んでいます。


仮想移動通信事業者によるZero Ratingの影響分析

移動通信事業者(MNO: mobile network operator)の通信設備を借りて移動通信サービスを提供する仮想移動通信事業者(MVNO: mobile virtual network operator)の出現は利用者にとっての移動通信サービスの選択肢を多様化し、マーケットの拡大に寄与しています。

MVNOは様々なサービスプランを開発することで利用者獲得数の増加を図っていますが、例えば動画などを提供する特定のコンテンツ事業者(CP: content provider)のコンテンツ配信によって生じるトラヒックを課金対象外とするゼロレーティング(ZR: zero rating)が一部のMVNOによって提供されています。

しかしZRは特定の事業者のトラヒックを他のトラヒックと差別化するためネットワーク中立性に抵触する恐れがあり、一部の国ではZRが規制されています.しかしZRに対する規制を含めた望ましい制度設計を明らかにするには、サービスを享受するユーザがZRにより被る影響を分析する必要があります。

そこで本研究室では、戦略分布で表現される社会状態の変化を分析可能な動学的な理論体系である進化ゲームを用いて、低価格とZRのいずれかの戦略を用いるMVNOの市場ダイナミクスをモデル化することで、移動通信サービスのマーケットのダイナミクスを分析し、ZRに対する望ましい規制のあり方を明らかにする研究に取り組んでいます。